第九回民家の甲子園 高校生大賞 石川県立小松高等学校

石川県立小松高等学校 PR

 

 青天白日。悪かった模試、シャトルランでの筋肉痛、不安なお国の先行きをも一瞬で消してくれそうな、澄み切った空である。

 「全く北陸らしくないねー」、「雨でも降るんじゃない」、「いやいや、青天の霹靂は困る」。生徒会のお墨付きをいただき、正式に「郷土同好会」となった御一行は、小松駅前を直進しつつ、あまりの天候の良さに得意の詭弁も絶好調だった。「顧問の雨男ぶりが証明されたね!」とは一体誰の台詞であっただろうか。定かでない。

 「よし、こっち!」小松の新たな側面を求め、突き当たりの丁字路を曲がろうとすると、ふと見上げたカーブミラーにこまつ町家がのぞいている。ばあちゃんに「魂吸い取られるから止めね!」と言われたあの頃を思い出しておののきながら、決死の覚悟でシャッターを切る。そんな生命の危機とも知らず、やはり他のメンバーはずんずんと左へ進んでいく。

 読経の声がかすかに聞こえてくるお寺、通りから通りへ風が行く小道。それらを過ぎて、「あ!」と誰かが天を指す。見上げれば、すすけた町家づくりの染み抜き店の陰で、そよそよと鯉の親子が遊泳しているではないか。五月五日は模試の日だとする受験生に、鯉のぼりは思いがけない癒しと和みであった。ただ、電線と風は天敵である。

 鯉のぼりの偉大さを噛みしめていると、また別の鯉のぼりが見えてきた。あれ、鳥居も。こんなところに神社、あったんだ。本折日吉神社と書いてある。何とここは小松市最大のお祭り・お旅まつりの舞台であるらしい。

 日が差して照っている鳥居の真ん中で、先行く友が跳ねている。魔除けの神猿、子授け石、木陰に隠れる謎のウルトラマン像、八方塞がり除災まで。手広い神様のお膝元には、俳聖・芭蕉も足を延ばしたのか、歌碑がひっそり建てられていた。

 神社を抜けたところに、可愛らしい猫の置物を発見。別名「愛猫家の集い」である私たち同好会は、すかさず撫でる。撮る。賽銭を投じる。通りすがりのおばさま方の視線に似て、二匹の招き猫は温かい目でこちらを見つめるのであった。

 「良い小道みっけー」、「美味しそうなお菓子やなあ」、「あの角曲がったら何かありそう」。まるで旅番組のように、温故知新の「故」に「新」鮮さを見出し歩いて三時間。とうとうあの名作ジブリアニメと見紛うお宅にもめぐり合ってしまった。東京・三鷹に負けない魅力が小松市にはあるのだと、ちょっと誇りに思い、レンズを向ける。

 通り道のアーケード街でも、古いけど和やかな文具屋さんの粋な品揃えに感動したかと思えば、建物の一角の貸し借り自由な本棚のタイトルに爆笑し、知り得なかった町家を見つけて一同で驚きもした。

 知らない街に知らないものがあるのは当然である。だが、知っている街であれ、知らなかったり、見落としていたりするものが多い。今回は、その「良い見落とし」をたくさん掬いとれた気がする。「これって郷土同好会の本望じゃない?」と誰かは言った。