第八回民家の甲子園 京極賞 大分県立竹田高等学校

大分県立竹田高等学校 PR

 

毎日の通学の中でその変化に気づくことは難しい。そう感じました。雲の流れ、気温、空の色。毎日少しずつ変わっていきます。しかしながらいつかはまた戻ってくる。同じ空はないなんて言う人もいますが、ぼくたちにとってのこの空はいつまでたってもこの空なのです。町の風景は徐々に変わっていきます。それもぼくたちが気づかないほどゆっくりと。残していきたいこの風景。何故そう思うのか。そんなことは問題ではない。ここにはぼくたちが育ってきた町があるから。失いたくないから。変わってほしくないから。こんなにも楽しい風景を、明日に残していきたいから。変わっていく僕たちにしかできない、変わらないという決断をするために。「風」ぼくたちの通学路

 

風と共に

春がやってきた。枝垂れ桜がさいたという。樹齢400年。この土地の大先輩。ここにはどんな風が吹いていたのだろうか。同じ風がここには吹き続けているのだろうか。忘れることができない風景。その身に刻み続けた永年年月。家主はこの桜に何を感じ何を祈ったのか。答えは桜と風のみが知る。

 

通学路

日曜の朝。いつもとは違う雰囲気にぼくは目を覚ました。通り一つ抜けると太鼓や鐘の音が聞こえてきた。狐のお面を被った行列。賑やかな人の声。いつもの静かな雰囲気の町とは少し違っていた。お祭りと言えるほどの規模ではないけれど、確かにこの町に息づいていること。日に日に変わっていってしまうぼくたち。いつまでも変わらないこの町。焦るぼくたちに対して、この町の時間はゆっくりと流れていた。そこにあり続ける難しさ、ありがたさ。

 

町の夕暮れ

晴れた日の夕暮れ。曇り空の夕暮れ。気付くと町は真っ赤に。明日がまた来ることを約束してくれ、今日が二度と戻らないことを教えてくれる。そんな淡い、淡い夕暮れ。ぼく達がずっと見てきた夕暮れ。励ましてくれた夕暮れ。ぜんぶ頬をそめて真っ赤。

 

初夏のにおい

ほのかな草のにおい。草のにおいと虫の声。わずかに汗ばむ背中。前にみえるのは祖母の背中。自然の中にある人の影。太陽は水田に姿を映し、草木は風に身を任せる。どうしようもなく、夏というものが近づいてくるのだと知った。いずれぼくも、この風景の一部になるのだろうか。もしそうなのであれば、ぼくも、ぼくにも分かるのだろうか。大切なものが。切ないものが。どうしようもないものが。土のにおいがした。

 

秋の装い

秋。こんなにももの悲しく、切ない季節がほのかにあるのだろうか。冬の寒さを知っているからこそ、こんなにも真っ赤に紅葉するのだろうか。夏の名残。冬の気配。狭間に存在するからこその儚さ。短い季節。町も次第に冬の準備を進めていく季節。始まりから終わりに向けての準備期間。こんな時期にふと思うのだ。ぼくはここにいるのだと。