第十一回民家の甲子園 街かど賞 愛媛県立八幡浜高等学校

 

愛媛県立八幡浜高等学校 PR文

 

 過去から現在に至るまで、何代にもわたり伝統を受け継いでいくことは並大抵のことではない。そこには伝統を受け継ぐ者の意志、そして家族の支え、地域との密接な関係が不可欠である。

 八幡浜は、古くから漁師町として栄え、漁を終え帰港する際に掲げられる「大漁旗」や、地域の伝統行事に利用される「大幟」など、実に様々な場面において若松旗店の「作品」が生活の一部として組み込まれ、使われてきた。

 わたしたちはそんな一枚の旗に、命が吹き込まれていく過程を目の当たりにした。布目を整え、布をはり、下絵を描く。米ぬかを振り、色を挿す。いくつもの工程を経て仕上がって行く様は圧巻だ。真剣勝負の連続に目を奪われた。

 取材の際中、あとわずかで下塗りが終わるという作品を見せてもらった。しかし、それは裏地にほんの少しの滲みがある失敗作であった。、その少しの滲みにも若松さんは妥協しなかった。そこには確かな職人としての誇りがあった。自分の納得いかないものは、決して商品にしない。こうして作られた作品は、実用性が高く、無駄が一切ない凛とした美しさが感じられる。手作りの旗の良さについて若松さんはこのように話してくださったことがある。「旗は年月を重ねて色落ちしてもそれが旗の味になる。」と。このひたむきな姿や期待を裏切らない技術が、人々に認められ、多くを語らずとも何世代に渡って受け継がれてきた理由ではないだろうか。

 若松旗店の周辺は古民家がいくつか残っており、若松旗店自体も、とても立派な古民家である。現代の家にはない趣があり、未来に残すべきものである。しかし、それ以上に、この古民家に住んでいる人々の生活ぶりや、長い間受け継がれてきた伝統や技術などを守り、歴史を絶やすことなく継承することこそが後に続く私たちの役目なのではないだろうか。