三木町には、昔の面影を残した町並みがあります。ことでんを白山駅で降り、細い路地を歩いていくと白壁が目立つ民家が見えます。渡邊邸、数寄屋大地主揚屋十茶室の五つを移築した大屋敷です。今ではお茶席やカフェ、ギター教室などが開かれ多くの人が集う憩いの場となっています。
「心惹かれて」
さわやかな青空に映える真っ白な壁、大きな門構えをもつ渡邊邸。三木の町並みに多くの人が集う大屋敷があると聞き訪れました。初めて出会う古い民家を前に鼓動が高まります。私は、渡邊邸がもつ人を集わせる力に心惹かれ、歩み出しました。
「鯰魚庵」
床かまちは幕末の京の蒔絵師、佐野長寛在銘、菊桐の金紋散らしの高台寺模様。次の間の四枚のふすまは表千家好み、古代紫に白の五三の桐の置きあげ。欄間は福を招くと言われるこうもり模様。その品格のある造りに感銘しました。
「孤月庵」
遠州の描いた「孤月」のぬれ額は楽焼、軒に吊るされた吉原灯篭、その下に敷かれた織部瓦のエメラルドグリーンが鮮やかです。茶室の格式高さに圧倒される私たち。静寂の中で、時の流れを感じました。
「談笑」
縁側に座り、談笑する私と友達。渡邊邸との出会いは新しいことばかりでした。緑に囲まれた落ち着きある空間は、私たちを日常から解き放ってくれるような気がします。
「響き」
静かな茶室に差し込む春の光。寝転がって、畳に耳を当てると、この場所を守ってきた人たちの声が響いてくるような気がします。悠久を感じる時の流れの中で佇んできた渡邊邸、その歴史を感じ取れます。
高貴で格式高いながらも、その敷居を低くして皆が集う場に蘇らせたオーナーの小橋あやみさん。その想いが私の心に響いてきます。三木の町並みにある渡邊邸は人と人との交流を生み、心を通わせることができる、そんな空間だと感じました。