第十二回民家の甲子園 町並み賞 香川県立小松高等学校

 雪の絨毯の上に雪が落ちても、音はしない。だのに、雪が降る音は、しんしんと表される。車が過ぎ去る音さえも、雪に掻き消されてしまう。人の姿は見えない。しかし通りには、こちらを見つめる幾つもの顔があった。

  ふみゆけば雪に埋もるる雪だるま

 ここ白峰の村では、毎年二月に雪だるま祭りが催される。雪だるまが延々と並び、夜には蝋燭が灯る。賑やかな祭りが終わったその翌日も、雪だるまたちは笑顔のまま、その場に留まっている。

 村外れのとある民家もまた、雪に埋もれていた。おばあさんが玄関で出迎えてくれたけれども、そこへ至るまでひとしきり苦労する。

  スコップでたどり着きけり深雪宿(みゆきやど)

 百五十年の歴史を、欅の柱は受け継いできた。屋根雪にもおよそ揺るがない。そしてこの家に住まうおばあさんを、いつも見守って支えている。おばあさんは、村の小宿で出逢って以来ずっと一緒に過ごしてきたおじいさんとの思い出を、しみじみと懐かしんでいた。

  雪嶺(せつれい)に響くや(りん)一打(いちだ)

 白峰の村に引き継がれる工芸、牛首紬。民家の狭い一室で、織機に向かって作業をするおばあさんに出逢った。()を飛ばす右手と、(おさ)を動かす左手、そして左右交互の足踏みが調和し、小気味良いリズムを刻んで、伝統が織り込まれる。

  牛首を紡ぐ手に皺刻まれり

 大地の温もり感じる四月、新しい生命(いのち)の芽生えが訪れる。裏庭に咲く黄水仙は、今まで凍えていた白峰の土を照らしている。彩りの主役は、雪だるまに代わって春の花たちへと受け継がれてゆく。

  春来せば白き峰にも色映ゆる