第十五回民家の甲子園 優秀賞・審査員特別賞 石川県立穴水高等学校

「 時の流れ 」

 

 平成十九年三月二十五日、午前九時四十一分、突然の揺れに私は驚きました。特に小学校入学直前だった私達にとって、生まれて初めての経験であり、加えて今まで一度も経験したことのない恐怖でした。地面が揺れます。家具が揺れます。窓から見える風景が揺れます。身の回りの物全てが激しく震えます。こどもであった私は、本当にふるい飛ばされそうでした。その能登半島地震から、今年で十年の月日が流れました。

 

 先日古典の授業で、鴨長明の『方丈記』という作品を学びました。冒頭は、かの有名な「ゆく川の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず・・・」と続きます。一切の物は生滅変化して永久不変ではないと語ります。この十年で、私の住む穴水町もしっかりと復興しました。ただ、地震当時の町の様子は忘れることができません。古い木造住宅が崩れ、道路が沈下し、蔵がむき出しになっていました。

 

 これもまさに『方丈記』の「大地震・おほなゐ」で学んだ、「山は崩れて河を埋み、海は傾きて陸地を浸せり・・・堂舎塔廟一つとして全からず」と同じ様子でした。

そんな節目の十年でもあるため、復興した穴水町を撮りました。

春の桜の「能登鹿島駅」も滴るような緑の「来迎寺」も海に立つ「ボラ待ち櫓」も昔のままです。被害を受けた多くの家屋や商店は、再建され新しくなりました。地震に負けないと打ち出される太鼓の響きも変わりません。そんなゆったりとした時間の中で私達は生活しています。

 

 でも忘れてはいけないのです。それまで「能登半島には大きな地震は来ない。」と言われていたのにこの被害でした。十年経って、あまりにも綺麗になってしまったので、つい忘れてしまいます。それでも、その流れる時の中で忘れてはいけないことは、あるのです。