第十四回 民家の甲子園 町並み賞(岐阜県知事賞)愛知県立猿投農林高等学校

和みの空間 ~時代とともに歩む~                                     
                  愛知県立猿投農林高等学校 写真部

 学校から自転車で五分程の所に、終戦直後に建てられた家があります。そこで一人、黙々と年季の入った家を直している男性と出会いました。男性は、近藤直人さん五十八歳。周辺には、ディスカウントストアやコンビニ、小中学校やたくさんの住宅があり、多くの人が行き交う場所です。


 御当家は、新建材で建てられた家とは違い天然の素材が巧みに加工され、住居としての機能と時代を映すデザイン、そして手造りの温かみを兼ね備えた昭和時代前半期を代表する家屋です。おじいさんのため一部改装してあるものの、窓や戸も木枠のままであり、長年使い込まれた風合いが歴史を感じさせます。大量生産・低コストで品質にばらつきの少ない新建材の家が主流になることは避けられませんが、御当家は古き良き時代の面影を残しています。母屋の外壁に張られた焼き杉の板が、七〇年間風雨から家を守ってきました。壁はワラを練り込んだ土壁で、湿度の高い日本の夏はからっとして過ごしやすく、冬は暖房の暖かさが土壁に残り、快適な空間を提供してくれます。


 母屋の隣に、背の高い建物があります。終戦前に建てられた「ベーハ小屋」で、タバコの葉の乾燥をしていました。なぜ「ベーハ」かというと、アメリカ原産の品種の葉タバコを乾燥させたため、「米国の葉」つまり「米葉(ベーハ)」を乾燥させる小屋ということで、その名前で呼ばれるようになりました。ベーハ小屋は、第二次世界大戦前後にかけて全国にたくさん作られ、日本専売公社が乾燥方法などを指導していた関係で、どれも同じような形をしていたそうです。しかし、四〇年程前に乾燥小屋の役目は終わり、近藤家の納屋となっていました。この小屋が直人さんの目に留まり、喫茶店開店へ向け目下改装中です。


 当時の、日本のスタンダードだったに違いないこの家。家主の手で、和のテイストを強く感じることができる、誰もが和むとてもステキな空間へと進化しつつあるのです。