第十回民家の甲子園 街かど賞 愛媛県立八幡浜高等学校

愛媛県立八幡浜高等学校 PR文

 

『木には温もりがある。』

 

 よく耳にする言葉だが、その言葉の内容をうまく説明することは難しい。

数年前に自宅を新築した際、父と共に現場に足を運んだ時のことだ。リビングの床板を貼る職人さんの慣れた手つきを観察していると、あることに気がついた。それは隣り合う板と板の間を僅か数ミリではあるものの、隙間を空けて並べていたのだ。その理由を職人さんに聞いてみると、想像もしなかった答えが返ってきた。

 「木は切った後も、人間と同じように呼吸をしているんだよ。乾燥すれば縮むし、湿度が上がれば膨張する。だからわざと隙間を空けて、木が呼吸する手助けをしてやるんだ。そうしないと木が伸び縮みできなくて、平らな床にならないからね。」

 意外な答えだった。大地に根を張り、青々とした葉を輝かせている姿は、確実に生きていると言えるだろう。しかし、伐採され加工されても呼吸し続け、どんなに形が変わってもその命は途絶えないのだ。

 それを裏付けるかのように、古い町並みや古民家を訪れた際、懐かしいと感じる人は多いだろう。それは、遙か昔から木と共に生活してきた人間だけが感じる、本能的な感情なのだろう。実際、僕も今回撮影で訪れた古民家を懐かしく感じ、そこで働く職人さんの姿に感銘を受けた。それは真摯に作品と向き合い、よりよいものを作りだそうとする情熱を垣間見たからだ。作業場にあるどの道具を見ても、隅々まで手入れが届いている様子がはっきりとうかがえ、作品に対する深い愛情が感じられた。そして多くは語らずとも、その姿そのものが職人としての生き様を表現しているように見えた。

 今回の撮影を通して、自然と寄り添う職人さんの姿から、僕たちが今後守り伝えていかなければならない、木の温もりや魂のような大切な何かを感じた。